工法紹介

支柱強化型 土石流・流木捕捉工
サスティナブルバリア

概要

サスティナブルバリアは、主に小規模な渓流(無流水渓流)において、地形や人家の密集などにより、従来の砂防堰堤の施工が困難な場所に適用できる、本設(長期供用)の支柱強化型 土石流・流木捕捉工です。
基本構造は柔構造部材のリングネットと剛構造部材の支柱を組み合わせた「ハイブリッド構造」です。
「効果的・効率的な対策」の一つとして、土石流・流木や移動土砂から人的被害を防ぐことを目的としています。

本工法の開発にあたっては、設置箇所の直下流に人家等が密集しているケースを想定し、高い安全性と土石流・流木捕捉の確実性を確保するため、耐衝撃性能、捕捉性能の確認を目的に実物大の土砂実験ならびに水理模型実験を実施しました。

また、柔構造物工法の新しい工法として、既存の工法と合わせて系統化するため、土石流・流木、斜面崩壊土砂を捕捉対象とした支柱強化型については「サスティナブル」(支柱交換を容易にして持続可能性を向上させた)を、阻止面にリングネットを使用した工法は「バリア」の名称を付けています。

概要図

実物実験画像

土石流の流下に対する性能の把握と設計法の妥当性を検証するにあたり、土石流発生・流下区間を想定した斜面において、実際に起こりうる事象(堆積した土砂の上部に土石流が衝突)を想定した実物大実験を実施しました。
土石が防護柵をオーバーフローするまで土石を流下させた結果、F=196kN/m2の衝撃力(流体力)に耐えることおよびサスティナブルバリアが安定して土石を捕捉できることを確認しました。

模型実験

土石の阻止面であるリングネットの土石と流木に対する捕捉性能を確認するため、1/30スケールの直線水路を用いて、不透過型砂防堰堤とリングネットにおいて、95%礫径30cm(リング直径相当)以上の骨材を含む土砂と平均φ24cm相当の流木模型を混入させて比較実験を行いました。
その結果、リングネットは不透過型砂防堰堤と同等以上の捕捉性能があることが分かりました。

特徴

全容

サスティナブルバリアの特徴は、以下のとおりです。

  1. 阻止面にリングネットを用いることで土石の衝突時に衝撃を緩和し、支柱への負担を軽減する。
  2. 流木が阻止面に直角方向に衝突しても変形により、局部貫通に対する高い抵抗性を有する。
  3. 大きな土石の衝撃力を発生することのできる実験施設において,防護柵の土石に対する耐衝撃性能の確認を目的に実物大の土砂実験を実施している。
  4. 基礎構造に杭基礎を用い、一体で自立できる構造を確保することで,ネット強化型防護柵に比べ柵自体の土地の占有面積が小さく、設置箇所の土地の改変度が小さい。
  5. 除石・除木が必要になった場合、阻止面の開閉が容易にできる。さらに、リングネットの取替が必要になった場合においても、リング単体またはパネル単位の交換ができるため、阻止面の修復性が高く、コスト軽減も図れる。
  6. リングネットの素線巻き数、支柱間隔、支柱の長さを変えられることにより、設計の自由度が高い。

構造

構造については、ネット強化型と支柱強化型の防護柵の利点を組み合わせ、基本構造を杭基礎構造,阻止面にリングネットを用いるハイブリット構造(柔構造と剛構造の組み合わせ)となっています。
また、支柱(杭)を上杭と下杭で分割し、土石衝突時のモーメントが大きくなる部分だけに支柱内にH型鋼を内挿した支柱構造としたことで、支柱部材の軽量化と施工性を向上させました。
支柱が変形して交換が必要になった場合においても上杭のみを交換できるため、支柱の修復性が高く、コスト軽減も図れます。

設計

設計外力については「砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)」「土石流・流木対策設計技術指針」(令和7年3月一部改訂版 国土技術政策総合研究所編)に基づいて、サスティナブルバリアに作用する流体力・堆積土圧等の外力および流出土石量を算出します。
設計モデルは、以下の3ケースから作用外力が最大となるケースを選定します。

  1. 土石流時(土石流流体力+堆砂圧)
  2. 満砂時(堆砂圧)
  3. 越流時(越流土圧+堆砂圧、必要なケースに用いる)

構造計算は土石流流体力・堆砂圧作用時の柵の変形を考慮した力のつり合いにより各部材に作用する荷重を算出し、部材選定を行います。
設計手法の詳細については「サスティナブルバリア 設計・施工マニュアル」(2025年10月)に詳細に記述しています。

適用範囲

主として無流水渓流に適用されることを考慮して、下記条件の渓流を主な対象とします。
(1)流路が不明瞭で常時流水がなく,平常時の土砂移動が想定されない渓流。
(2)常時流水がある比較的小規模な渓流。
(3)基準点上流の渓床勾配が10°程度以上で流域全体が土石流発生・流下区間である渓流。
構造的には最大柵高が5.5mで捕捉対象の土石の量が確保できる場所を対象とします。